自衛防災組織って必要なの

1.あなたに出来ることは少ない

 まずはっきり申し上げましょう。マンションにも「防災組織」は絶対に必要です。なぜか?理由はシンプル、失われた命は二度と戻らないからです。

 マンションは便利で快適な住まいですが、「隣に誰が住んでいるのかよく知らない」「エレベーターで出会っても目をそらす」といった、都市型コミュニティ特有の"無関心ライフ"が広がっています。普段はそれでも平和ですが、災害時には大問題になります。

 いざ火災や地震が起きたとき、「あ、隣の奥さんがまだ逃げてない!」と気づいても、普段交流がなければ名前すら知らない。声をかけるにも、「すみません、そこの……えーと、3階の……たぶん佐藤さん?」とまごついている間に炎が迫ってきては手遅れです。

 考えてください。あなたは仕事に出かけて昼間は留守です。大地震が起きたとき、家事をされている奥様やお子さんを助けてくれるのは誰でしょう。

 マンションで火災が発生して、延焼した火の手が幼い子どもたちに迫ってきました。子どもたちを避難誘導してくれるのは誰でしょう。平日はどの階にも頼れる男がいないのです。

 災害に遭遇した時にああすればよかった、こうすればよかったと悲しみにくれた人々が、反省をもとに考え出したのが自衛防災組織であり避難訓練なのです。だからこそ、組織的に動く仕組み、つまり自衛防災組織が必要なのです。 

2.思い込みの危険を知って

 日本人は「まあ大丈夫だろう」という、根拠のない楽観主義に定評があります。自分のマンションは鉄筋コンクリートだから燃えないはず」「地震? きっと大したことないさ」「避難? わざわざ参加するの面倒だし」と、思っている方、手を挙げてください。はい、ほら、あなたです。

 でも残念ながら、それは"希望的観測"であって"権利"ではありません。火事はご近所事情なんておかまいなしに燃え広がりますし、地震はあなたが「今日は揺れないでね」とお願いしても律儀に従ってはくれません。

「大したことにはならない(はず)」と思うのはあなたの自由です。しかし、「自分だけは大丈夫」という思い込みが、家族や周囲の避難を遅らせ、結果的に命を危険にさらすのです。思い込ほど恐ろしいものはないのです。

3.昼間のマンションは無防備状態

 想像してみてください。あなたが会社で会議に出ている昼下がり、突然の大地震。家では奥様がベランダで洗濯物を取り込んでいる最中。子どもたちはおやつを食べながらテレビを見ているかもしれません。その瞬間、あなたは家族を助けに行けますか?……答えはNOです。

 平日の昼間、マンションには頼れる大黒柱がいないのです。残っているのは奥様方や高齢者、そして幼い子どもたち。そんな状況で「助けてくれるのは誰?」となると、結局近所の住民同士なのです。

 ところが、普段から交流がないと、「非常時の連携プレー」が成立しません。だからこそ、事前に組織を作り、役割分担を決めておく必要があるのです。

4.涙と反省の産物……防災組織と訓練

 防災組織は"人類が歴史から学んだ数少ない証拠品"でしょう。歴史を振り返れば、人類はしばしば同じ失敗を繰り返します。でも火災と地震に関しては、ようやく学んだのです。ならば活用しない手はありません。

「もっと早く避難していれば」「消火器の場所を知っていたら」こうした後悔の積み重ねから生まれたのが、防災組織と避難訓練です。つまり防災組織とは、人類の反省の結晶ともいえるのです。二度と同じ涙を流さないための知恵」なのです。

 防火防災管理者である副理事長は、理事長と協議しながら「自衛防災組織」の組織案を作成します。消防庁が示した基本的な班編成を参考に、総務班、情報班、消火班、救出救護班、避難誘導班、給食給水班を編成します。

 足腰のしっかりしている高齢者と奥様方で、自衛防災組織の班を編成するのが最善です。少人数のマンションは、総務班に情報班を加え、消火班と救出救護班を合体させ、避難誘導班と給食給水班をまとめてもよいでしょう。マンションの規模や構造に応じて、班編成や人数を調整します。

 災害発生は昼間だけとは限りません。災害発生が夜であれば、在宅しているご主人とお子様は奥様の業務の補助をします。身勝手の集合体と言われるマンションでも、災害の時はみんなで助け合うことが重要です

 避難計画作成時には、入居している高齢者や身体障がいのある方がわかる居住者名簿を用意しておきます。災害時に必要とされる道具・備品・非常食類の備蓄や、災害発生時における安否確認体制の整備なども検討しておくことをお勧めします。

5.自衛防災組織の役割とは

・自衛防災隊長・副隊長(理事長・副理事長) 

 自衛防災組織全体の指揮・統括、災害発生時の状況判断と指示、訓練計画の立案・実施、消防署や救助隊との連携。

・初期消火班 

 初期消火活動の実施、屋内消火栓の点検・整備、消火器と屋内消火栓などの使用方法の習得、消火訓練への参加と住民の参加要請。

・通報連絡班 

 119番通報の実施、閉じ込められた居住者の救出法の習得、救護訓練への参加。

・避難誘導班

 批難誘導の実施、避難経路の熟知、避難誘導訓練への参加。

・応急救護班

 応急手当の実施、AEDの使用方法の習得、救護訓練への参加。

6.消火訓練で消火方法を身につけましょう

 マンションに法令上の定めはなくても、年1回は消火訓練が必要です。できれば年2回は避難訓練をすべきでしょう。飲食店が入っている複合型マンションの場合は、年2回以上の消火訓練と避難訓練が義務付けられています

 消火訓練で消火活動をするときは、消防設備点検者や消防署と打ち合わせて水を充てんした消火器とAEDを借用して使用します。事前の打ち合わせで消防署員の立会いと指導を求め、訓練終了後に講評をいただきましょう。

7.避難訓練はとても重要です

 避難時は避難誘導班が中心となって、高齢者や身体障がい者の避難補助を行います。階段避難車やレスキュー・キャリーマットなどの搬送用具があれば、実際に使い方を試すことお勧めします。この時に、毛布を利用する簡易タンカの組み立て方と使い方も学びましょう。

 避難が完了したら、居住者は避難に要した時間を防火防災管理者へ報告し、居住者名簿に避難所要時間を記入してもらいます。全員の無事避難を確認したら、防火防災管理者は理事長へ報告します。

 避難訓練は、年一回消防機材の点検日に行うことが推奨されます。訓練をしていないと、避難中に階段から転げ落ちて避難中の人を巻き添えにした、逃げ遅れた人の救助に向かった役員が、煙に巻かれて死亡したなど、二次災害が発生する場合があります。 

8.まとめ

 繰り返します。「大したことにはならない(はず)」と思うはあなたの自由です。しかし、それは希望や願望であって権利ではありません。考えてください。あなたは仕事に出かけて、留守の昼間に災害が起きた時です。あなたの家族が被災したときは、涙を流すだけで良いのですか。 

 災害に遭遇した時にああすればよかった、こうすればよかったと悲しみにくれた人々が、反省をもとに考え出したのが自衛防災組織であり、避難訓練なのです。家族や多くの知人を亡くした人々が、悔いと涙の中で考えたのが災害対策です。 

 
 昼間災害が発生すると、家事を処理している奥様や、無心で遊んでいる幼子をあなたは救うことは出来ません。悲しみや悔いは私たちだけで充分です。同じ苦しみを味わわせたくないと、被災された方々が考え出されたのが防災対策なのです。 

 無関心がデフォルトのマンションこそ、防災組織が命を救う“最後の砦”なのです。悲しみと後悔を未来に残さないために……今日から防災組織を考え、行動に移しましょう。